トップページ

森知也教授|Prof. Tomoya Mori

都市経済学者 森知也

京都大学経済研究所 教授
専門分野:都市経済学
最終学歴:ペンシルバニア大学, 地域科学Ph.D.
その他の所属:
– 経済産業研究所 ファカルティ・フェロー
東京大学CSIS・客員教授
麗澤大学RIPRESS・客員教授
統計数理研究所・客員教授

日本はいま、高齢化を伴う人口減少が最も進んでいる国です。2020年時点で1億2,600万人であった総人口は、いまの調子で子供が減っていくと、100年後には3,000万人から5,000万人程度まで減少すると考えられています。3,000万人とは、江戸時代レベルの人口規模であり、現在の東京都市圏よりも小さいサイズです。5,000万人とは、およそ東京と大阪都市圏を合わせたサイズです。その頃には多くの都市や地域から人が去り、地方の景色はずいぶん変わるでしょう。わたしたちが住む地域は一体どうなってゆくのでしょうか。

このコラムでは、経済理論とデータを駆使して将来の日本の地域の姿を予測し、この未曾有みぞうの人口減少をどのようにしてチャンスに変えられるのか考察します。2023年12月から月1回のペースで連載しています。高校生以上の方や新聞を読む習慣がある中学生以上の方なら、どなたでも理解できる言葉を使って書いていくつもりです。

記事一覧
第1話 「都市」というレンズを通してみる地域経済
第2話 経済理論で読み解く日本の都市の過去50年
第3話 都市ができるしくみと都市に秩序が生まれるしくみ(前編)
第3話 都市ができるしくみと都市に秩序が生まれるしくみ(後編)
第4話 100年後の都市と地域のすがた (前編)
第4話 100年後の都市と地域のすがた (後編)
このコラムについて
多くの方に届けるための取り組み

コラムに興味を持ってくださる一般の読者の皆さんに分かり易いものにするため、毎回記事の公開前に3人の方に下読みをしていただいています。3人はいずれも専門家や経済学のトレーニングを積んだ大学院生ではなく、まだ学界の空気に染まらず自身の知的好奇心のままに学んでいる初学者と、普段は経済学や数学に触れていないけれど、一定程度の読書量があり文量を読める方々です。

 「初学者」は、京都大学文学部4回生の小柳慶汰さんです。学部1回生のときにわたしの研究室を訪ねてきて以来2年間、わたしの大学院の講義や主催する研究会に参加して、勉強を重ねてきました。3人の中で唯一、都市経済・空間経済学の専門知識を持っていますが、専門分野の常識や流行に囚われず、自分の頭で考えることがしっかりとできる人です。それは簡単そうでとても難しいことです。後者の2人は、わたしの秘書をして下さっている中村有希さんと、このウェブサイトを一から作って下さった、わたしが所属する経済研究所の事務職員の伊藤圭祐さんです。中村さんと伊藤さんは、経済学も数学も素人の、純粋な「文系人」です。

この3人と、文字通り何時間もかけて、数式を使わずに言葉だけで、できるだけ本質を省かずに伝える表現を探し、推敲を重ねた文章を公開しています。3人はそれぞれに、伝わりにくい文章の問題を指摘し、段落を入れ替え、ときには文章全体を作り直して提案してくださいます。コラムでは、提案していただいた文章の多くを取り入れています。ですから、下読みというよりは、一緒に文章を作っていただいていると言った方が正確かも知れません。それでもなお、十分に平易な言葉に変換できないまま公開せざるを得ない、技術的な部分は多く残っていますが、推敲の時間にはいつも、言葉の力に驚かされています。すでに掲載済みの話も、少しずつでも言葉を洗練して改訂していきたいと思っています。

研究チームについて

コラムの中で、しばしば、「わたしの研究チーム」という表現を使います。チーム」ってなんですか?と聞かれることが多いので、説明しておきます。このコラムの内容は、わたしが中心になって進めてきたいくつかの研究に基づいています。まず、現実の経済で生じる経済集積を理解するための実証分析の手法があり、その手法を使って、経済集積のパターンや秩序、その変化を特徴づけ理解する実証分析があります。他方で、経済集積を説明するための基礎理論があり、それを発展させて、現実の経済で現れる経済集積のパターンや秩序を説明する、応用理論があります。さらに、理論と実証の両方の知見に基づいて、現実の個々の都市の人口や配置、産業構造などを再現したり、将来を予測したりするための、数値解析や統計手法の開発があり、最終的に実際に再現したり予測する研究があります。その過程の全てを自分の知識と技術だけで行うことは、わたしにはできません。ですから、それぞれのテーマについての専門家と組むことにより、ひとりでは越えられない知識や技術の壁を乗り越えています。

わたしの場合は、全ての過程について同じチームで取り組むのではなく、一つ一つの段階で別のチームを組んでいます。都市人口分布のべき乗則を伴うフラクタル構造の実証は、Tony E. Smith氏(ペンシルバニア大学, 米国)とWen-Tai Hsu氏 (アカデミア・シニカ, 台湾)と組みました。基礎理論 (第2話で登場する「国レベルでの大都市への集中」「都市レベルでの平坦化」の背景理論)や、都市人口分布のべき乗則を伴うフラクタル構造を再現する理論の構築は、赤松隆氏(東北大学)、大澤実氏(京都大学)、高山雄貴氏(東京工業大学)らと行ってきました。このコラムの中心テーマである、都市の盛衰の将来予測は、村上大輔氏(統計数理研究所)と行っています。その他にも、地域間の貿易データを使って、これらの理論の様々な側面の実証分析を、Jens Wrona氏(エッセン・デュイスブルク大学, ドイツ)と行っています。

このようにこのコラムで登場する「研究チーム」が指すメンバーは、扱う領域によって異なっています。