最近、東京の各所で新しい高層ビルが次々に出現しています。2024年7月13日の朝日新聞デジタル版には、「100年に1度」と言われる大規模な再開発が進んでいるとの記事が掲載されました(有料会員でないと読めません)。実際、仕事で東京に行き、品川や東京駅周辺を通過するだけでも、その雰囲気を感じます。しかし、一体どんな理由で、この急速な人口減少の下で「100年に1度」の大規模な都心再開発が、しかも高層化を伴う再開発が進んでいるのでしょうか。私にはさっぱり分かりません。
東京や各地方の中核都市は、日本の全体の人口が減少する中でもしばらくは人口が増加するかもしれません。コラムにも書いたように、今、「国レベルで大都市への極化」が進んでいるからです。しかし、加速する日本の人口の減少が、奇跡でも起こってすぐに増加に転じない限り、地方から人を吸い寄せることによる大都市の人口増加は、この先もってせいぜい10年でしょう。それ以降は、人口が増加することも、都心の人口密度が増加することもないでしょう。過去の傾向と理論的な知見に基づけば、むしろ大都市は急速に縮小・低密度化していくはずです。
建ててしまった高層ビルは、後になってから縮めるわけにはいきません。もっと慎重になるべきではないでしょうか。今、大都市で進めるべきことは低層化・低密度化でしょう。低層化は地域コミュニティの再構築につながります。低密度化は、自動運転や物流自動化に親和性が高くなるよう、また、災害に脆弱な地域を避けて住まうように意識して都市計画することで、今の過密な大都市をより住みやすい都会に変えていくチャンスをもたらします。
図1は、社人研による日本の将来人口(中位推計)に基づいて予測した、地方7区分の最大都市の全国人口に占めるシェアの推移を示しています。2020年時点の各都市の人口シェアを100としています(地方7区分については7月14日づけのブログ図1を参照してください)。
2020年以前のグラフは7月14日付けブログの図2と同じです。2025年以降のグラフは最新の予測結果(7月15日時点)に基づきます。これは予測ですから、その通りには実現しないでしょう。しかし、大都市が近い将来、急速な人口減少に直面することは変わらないでしょう。建物のサイズを今以上に上へ向かって伸ばすメリットは殆どないどころか、次の世代に負担を残すだけだと思います。スマートに縮小して、スマートに成長すればいいのに。
(参考:「人口減少時代の大都市はスマートに縮小できるか」週刊エコノミスト・オンライン 7月5日)
